書簡 その198 鰆
- 森章二
- 2024年3月19日
- 読了時間: 2分
サワラの美味しい季節がやってきた。
関東では、いや我が家では塩焼き。関西では西京漬けといって味噌漬けにすることが多い。
味噌に酒粕を混ぜたり、各家庭により工夫された味がある。
もっとも関東でも醤油に出汁を加えたタレに漬けて各々の味に仕立てて照焼にしたりする。
海に近く新鮮なものが手に入る地方では刺身にする。
我が家では新鮮なものに塩をしてから、酢で洗ってコブ〆にした。これがうまい。
子どものころからの好物であるこのサワラだが、魚へんに春と書いて「サワラ」。
魚の名前は魚へんで書くものが多いが和名は全部カタカナで表す事になっている。
以前、漢字で書いていた頃は字を見ただけで、そのものの姿がわかる、面影が浮かぶという情緒のあるものが沢山あった。
当て字も多いが。植物で云えば、釣船草や蛍袋など、いわれを知りたくなる。
魚も魚へんで表す以前の漢字で書かれたものには、味のあるものがある。その一つがサワラだ。
狭い腹と書いてサワラ。この魚の姿そのままだ。細身のスッキリした体形。そして小さめのものをサゴシと云うのだがこれも漢字にすると狭腰だ。
鰆では知ることのできない味わうことのできない文化がついこの間まであったのに・・・。
地名にしてもそうだ。便利で分かりやすくなったかもしれないが、文化が失われて行くのは味気ないものだ。
国際社会になって薄れていく日本人の心。
昭和30年代の、ほのぼのとした時代を懐かしむ映画や読み物がヒットしているが
懐古主義ではなく、本当に取り戻してこそ、心の栄養ではないだろうか。
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